ワークライフバランスとは?
企業ができる取り組みとメリット
2019年に働き方改革が本格始動してから、ワークライフバランスを重視する人が増えています。良好なワークライフバランスは労使の双方にとって重要な意味合いを持つため、企業側としても重点的に取り組んでおきたいところです。しかし実際にはどのような施策が効果的なのか分からず、中々実践に踏み出せない人も多いでしょう。本稿では良好なワークライフバランスの実現に向けて必要な知識を紹介します。
1.ワークライフバランスとは
ワークライフバランスは日本語で「仕事と生活の調和」という意味になります。仕事で稼いだお金は生活基盤を整えるために重要な役割を果たします。しかし仕事ばかり頑張っていると、プライベートにかける時間や体力が無くなってしまうでしょう。趣味・学習・育児・介護といった私生活の時間を充実させる事は生きがいに繋がり、仕事に対するモチベーションも向上していきます。仕事と生活を両立させてこの良好なサイクルを生み出す事がワークライフバランスの目的です。ワークライフバランスという概念自体は1980年代のアメリカで既に提唱されており、日本にも1990年代に考え方が輸入されました。現代の日本では少子高齢化や労働人口減少といった社会問題が喫緊の課題となっており、労働環境の改善にもメスが入れられています。その一環として、政府や行政ではワークライフバランスを考慮した働き方を推奨しているのです。
2.企業がワークライフバランス改善に取り組むメリット
政府や行政からの働きかけによって、従業員のワークライフバランスを重視する企業は増えています。これはワークライフバランスを整える事が従業員だけでなく、企業にとっても多くのメリットを期待出来るためです。ここではそれらのメリットについて見ていきましょう。
従業員の病気リスクの低減
人手不足が慢性化している現場では、個々の従業員が長時間労働を強いられているというケースも少なくありません。従業員の十分な休息時間が確保されていないと疲労が取れず、免疫力の低下から病気を患ってしまう可能性が高いです。事態が悪化していくとうつ病や過労死といったリスクも高まってくるため、従業員のヘルスケアは企業にとって重要な取り組みであると言えるでしょう。ワークライフバランスを重視した働き方は長時間労働を抑制するため、従業員が病気を患うリスクの低減が期待されています。
離職率の低下
せっかく自社で優秀な従業員を確保・育成しても、すぐに辞められてしまっては意味がありません。特に自社で育て上げた人材の流出は戦力減になるだけではなく、それまでの教育コストも水泡に帰してしまいます。厚生労働省が実施した「平成30年若年者雇用実態調査の概況」によると、離職者が会社を辞めた理由の約30%が「労働時間や休暇制度に対する不満」でした。さらに、大手人材派遣サービスの「エン派遣」が実施したアンケート調査においては「次の職場選びではワークライフバランスを考慮する」と回答した人が全体の約90%にも及んでいるのです。
職場のワークライフバランスが充実すると労働環境が改善され、従業員が快適に働く事が出来ます。仕事のモチベーションや企業への愛着が高まる事で離職率の低下にも繋がるでしょう。競合他社への人材流出を防ぐという戦略的な意味合いも大きいです。
コスト削減
あまり認知されていないポイントですが、ワークライフバランスの充実は企業活動のコスト削減にも一役買ってくれるので覚えておきましょう。例えばワークライフバランスが整っていれば離職率が低下するため、新しい従業員を雇うための採用コストが抑えられます。従業員が健康な状態で働き続けていれば、企業が負担する医療費も少なくなるでしょう。また、ワークライフバランスによって従業員の生産性が向上すると業務効率の改善が期待出来ます。時間外労働が減少する事で残業や休日出勤にかかる人件費も削減されるのです。
経営投資に資金を回せる
人件費・医療費・採用コストなどで浮いた分の資金は他の取り組みに回す事が出来ます。次のステップとしては、経営投資にかける資金を増やすというアプローチが有効です。例えば社員研修制度や資格取得支援制度を充実させるなどすれば、従業員のさらなるスキルアップが期待出来ます。健康診断のオプションを増やして、従業員が安心して働ける環境を強化していくのも良いでしょう。従業員の働きやすさは企業の未来にとって重要なファクターなのです。
優秀な人材の獲得
人材紹介企業のあるアンケート調査によると、「転職活動では年収よりもワークライフバランスを重視する」と回答した求職者は回答全体の3分の2以上という結果が出ています。もしも自社でワークライフバランスの整備が遅れていれば、それだけでも応募者減少に繋がってしまう可能性があるのです。採用活動は企業が応募者を選考するだけでなく、逆に応募者が企業を見極めるための機会でもあると言えます。労働者人口が減少して人材確保競争が激しくなる現代では、ワークライフバランスを整えて優秀な人材に自社をアピールする事が重要になっていくでしょう。
3.ワークライフバランスの改善に向けて企業が取り組むべき施策
企業側でワークライフバランスを整えるためには、要点を押さえて的確な施策を実践する事が大切です。以下に代表的な取り組み例を列挙していくので参考にしてみてください。
育児休暇
男女共同参画社会が提唱されている現代では、育児休暇制度の充実がワークライフバランスの充実に効果的です。育児休暇は法律によって保障されている従業員の権利ですが、人手不足や仕事の繁忙期など様々な事情から取得しにくいという声も散見されます。多様性を尊重する機運が高まり、女性に限らず男性でも育児に注力する事は珍しくなくなりました。従業員が気兼ねなく子育てに取り組める環境作りには、企業側でワークライフバランスを整備する努力が求められているのです。
フレックスタイム
働き方改革や感染症対策の観点から、フレックスタイム制を導入する企業も増加傾向にあります。フレックスタイムとは企業が総労働時間を定め、その中で従業員が日々の労働時間を自分で調整するというシステムです。出社時間・退社時間をある程度任意で決める事が出来るため、柔軟な働き方でプライベートと仕事の両立というワークライフバランスの目的を実現するのに適しています。
休暇制度
年末年始・夏季・有給休暇など、従業員にとって休暇制度はワークライフバランスを整えるために重要な要素となっています。しかし国内企業では自分の上司が休暇を取得していないと、自分も休暇を申請してはいけないと考えている人も少なくありません。育児休暇同様、こうした休暇制度は従業員が持つ権利です。しっかり休暇制度を利用してもらうためには、上層部から積極的に働きかける姿勢が大切になります。もちろん無理強いするのは望ましくありませんが、気兼ねなく休暇を申請出来る職場環境を作るには管理職や経営陣からのアクションが必要と言えるでしょう。
短時間勤務
社内の状況に応じて、可能であれば短時間の勤務形態を設けるというのもワークライフバランスの充実に有効です。例えば1日あたり7.5時間勤務が通常なのであれば、5時間・6時間勤務のスタッフを配置します。全員の勤務時間を短縮するのではなく、育児や介護などによってライフスタイルが変化した従業員に対して柔軟に適用するのが基本です。これにより離職率が低下して人材確保に効果が期待出来ます。
リモートワーク・テレワーク
新型コロナウイルス流行を契機に導入が進んだリモートワークやテレワークも、ワークライフバランスを整える事が出来ます。自宅や貸ワークスペースで仕事を進められるリモートワークやテレワークは、従業員が時間を有効活用しやすい勤務スタイルです。出社義務が無く通勤の手間隙もかからないため、従業員のワークライフバランスに配慮出来ます。ただし、社内情報を外部で取り扱う事になるためデータの取り扱いに関するルールは厳格化しておく必要があるでしょう。セキュリティ体制を強化してデータ漏えいの防止にも注力してください。
福利厚生
福利厚生は従業員が快適に働くための環境作りに欠かせない存在と言って良いでしょう。福利厚生には「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の2種類がありますが、労災保険や厚生年金を含む法定福利厚生は企業側で内容を調整する事が出来ません。重要なのはそれ以外の法定外福利厚生を充実させる事です。法定外福利厚生の例としては住宅手当・宿泊や旅行の補助・セミナー受講補助などが挙げられます。企業が独自に定める法定外福利厚生は他社との差別化にも繋がるため、採用活動にも影響を及ぼすポイントです。特定の従業員を対象としたものではなく、幅広い視点を持って様々なニーズに対応する支援を考案しましょう。
ワークライフバランスの見直しで柔軟な働き方を実現させよう
ワークライフバランスは仕事と生活の調和を目的とした働き方です。従業員が自分のライフスタイルにマッチする働き方を実現出来るように、企業では制度策定や職場環境の整備といった取り組みが求められます。大切なのは多角的な視点からさまざまな取り組みを実践し、企業側でフレキシブルな体制を構えておく事です。従業員の柔軟な働き方を実現して、人材確保や生産性向上など企業活動のクオリティを底上げしていきましょう。
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